(マタハラ問題)

私はフレンチレストランを経営しており,ソムリエールを一人雇用していました。その女性従業員には営業日には毎日出勤してもらい,非常に信頼を置いていました。彼女から,「妊娠をしたので,産休に入る前の期間についても,勤務日を減らしてほしい」との要望を受けました。彼女には非常に店に貢献してもらっているので,要望どおりにしてあげたいのですが,レストランの経営状況のことも考え,彼女にはこれを機に仕事を辞めてもらい,新たにソムリエを雇うことを検討しています。
レストランの収支を考えると,二人の従業員を雇用する余裕は今のところありません。彼女には,私から「今後のことを考えるとうちのレストランで雇用を維持できるかどうかも自信が持てないので,体のことを最優先して,無理に働かなくていい」と伝えました。彼女は仕事を辞めたくないといいましたが,私の決断は変わらず,最終的に彼女に解雇予告手当を支払って,解雇することにしました。この解雇は,妊娠がきっかけではありましたが,主たる理由はレストランの経営維持を考えての判断です。私がこの女性従業員とトラブルになる可能性はあるでしょうか。
この女性従業員に対する解雇が法律違反となるかどうかのポイントは,本件解雇が妊娠を「理由とした」不利益取り扱いに当たるといえるか,というところです。

先ほどのマタハラの定義の説明にあったように,法律と告示の内容によれば,妊娠を「契機として」行った解雇については,原則として妊娠を「理由として」解雇をしたものと解釈されます。

そして,例外的に,その不利益取り扱いの影響を上回るような「業務上の必要性」や,「労働者への有利な影響」があることが客観的に存在するときには,法律違反に当たらないと判断される場合があります。

ただし,労働者を解雇するという場面においては,これらの例外に当たる場面は非常に限られているのが実情です。