(フランチャイズ契約における紛争)

ノウハウの付与について

ノウハウとは,一般に,事業上利用可能な技術上,商業上その他の知識・経験に基づく情報を意味します。
具体的には,マニュアルなど物の提供,スーパーバイザーによる経営指導・講習会の実施によって,ノウハウの提供が行われます。
フランチャイズ契約締結時において,当事者間で「提供されるノウハウが何であるか」を特定しておくことは,トラブル回避のために非常に重要です。

例えば,マニュアルなどの物が提供される場合であれば,「どういったマニュアルが,どんな媒体(書籍・その他記録媒体)で,いくつ提供されるのか,給付時期や給付頻度はどうか」といった点で内容を特定しておきます。スーパーバイザーによる指導・講習であれば,「スーパーバイザーの経歴・分野・レベル,スーパーバイザーの人数,指導場所,指導期間,指導・講習等実施の頻度」などによって内容を特定します。

問題になりやすいのは,フランチャイジーが,フランチャイザーから提供されたノウハウを不正に利用したり,第三者に開示しようとした場合に,フランチャイザーから,秘密保持義務違反を理由として損害賠償請求等を受ける可能性があります。
実際には,営業秘密の漏えいを防ぐために,フランチャイズ契約の内容として,フランチャイジー側に「競業避止義務」を負わせておく場合がほとんどです。つまり,フランチャイジーが,フランチャイザーから提供されたノウハウを利用して競業を行うことを禁止するという条項を設けることで,ノウハウ等の流出リスクを回避します。
※競業避止義務については,後ほど「契約終了時の問題」としても説明します。

ロイヤルティについて

フランチャイズ契約においては,フランチャイジーは。フランチャイザーから提供されたフランチャイズ・パッケージの対価として,契約が継続する限り,定期金として「ロイヤルティ」をフランチャイザーに支払います。
ロイヤルティの支払方式は,
①フランチャイジーの売上や利益の金額にかかわらず一定額のロイヤルティが徴収される定額方式,②フランチャイジーの総売上利益の一定割合の金額が徴収される方式(総売上利益方式),③フランチャイジーの売上高に対する一定の率のロイヤルティを徴収する方式,④粗利益に一定の率のロイヤルティを徴収する方式,などがあります。

フランチャイズ契約の締結後において,フランチャイジーからロイヤルティの軽減を求めることは,基本的に難しい(※一般に,フランチャイズ契約においては,一定の要件を充たさない限り,ロイヤルティの金額変更は認められないとする条項が盛り込まれているため。)です。
ですので,トラブル回避の点からは,フランチャイズ契約締結時において,「ロイヤルティの計算方式がきちんと契約書等に明記されているのか」「計算方式について,フランチャイザーから十分な説明が尽くされたか」を確認することが重要です。

ロイヤルティについて契約書への明記や説明が不十分であったがために,契約締結後にフランチャイジーが被った損害については,フランチャイザーに対する損害賠償請求が認められる場合もあるため,注意が必要です。

そして,ロイヤルティの金額が妥当であるかについても,特にフランチャイジーの経験が少ない場合などには,判断が付きづらい面もあると思いますので,やはり契約締結前の段階から弁護士等の専門家に相談して契約内容を精査してもらうことをお勧めします。

営業秘密について

フランチャイズ契約においてフランチャイジーは,フランチャイザーが開発または永年培ってきたノウハウ等の情報(フランチャイズ情報)について提供を受けます。そして,そのフランチャイズ情報は営業秘密として保護され,フランチャイジーが第三者に開示したり使用することについて,一定の制限が設けられます。
具体的には,不正競争防止法2条1項7号において,「不正の競業その他の不正の利益を得る目的で,又はその保有者に損害を加える目的で」の営業秘密の使用や開示は禁止されています。
このほか,フランチャイズ契約の内容として,秘密保持条項が定められることが多いです。

どのような情報を営業秘密として保護するかについては,フランチャイズ契約の秘密保持条項の内容として定めることもありますし,不正競争防止法2条6項の中で,「秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないものをいう」という定義がなされており,この定義を参考に,個々の情報が営業秘密として保護されるかが判断されます。

製造物責任について

飲食店の開業においては,常に,飲食物の提供に伴う製造物責任の発生について意識を払わなければなりません。
店舗の顧客が飲食物の提供を受け,結果として食中毒が発生した場合には,提供した飲食物を「製造」「加工」「輸入」した業者が,被害者に対する損害賠償責任を負うことになります。つまり,フランチャイザーであれフランチャイジーであれ,「製造」・「加工」・「輸入」の主体が誰であるかによって,責任の主体が変わります。