(フランチャイズ契約における紛争)

名板貸しの問題

フランチャイザーが,フランチャイジーに対し,自己の商号,商標や標識などの使用を許諾している場合に,フランチャイジーの取引相手方に対して,フランチャイザーが責任を負うことがあります。いわゆる「名板貸責任」と言われるもので,会社法9条・商法14条に定められています。

取引相手方からすれば,フランチャイジーがフランチャイザーの看板を背負って営業している以上,フランチャイザーが営業主であるとの外観があることから,名板貸しをしたフランチャイザーにも,このような外観を作りだしたことについて一定の法的責任を認めるとしたものです。

もっとも,フランチャイザーがフランチャイジーの負った法的責任を全て負担するというものではなく,原則として,フランチャイザーは,フランチャイジーが第三者との間で行った「取引によって」生じた債務について責任を負うことになります。
フランチャイジーが不法行為を行ったために第三者に対して負った債務(例えば,交通事故を起こしたことに対する損害賠償債務)については,原則としてフランチャイザーは責任を負いません。
フランチャイザーとしては,こうした名板貸責任を回避するために,フランチャイジーの各店舗において,事業主体があくまでフランチャイジーであることが分かるような外部への標記を心がけるべきと考えます(例:店舗の看板,名刺,請求書や領収証類など,取引相手方が目にするもの)。

研修の実施と研修をめぐるトラブルについて

フランチャイズ契約においては,フランチャイザーがフランチャイジーに対し,商標やノウハウ等のパッケージを提供し,フランチャイジーがその対価を支払うというシステムですから,その中に,フランチャイザーがフランチャイジーに対し経営指導・技術援助といった名目で行う研修が含まれている場合があります。
一般的には,開業前の初期研修と,開業後の研修が行われることが多く,講義形式とOJTを合わせたものが実施されます。

研修費用をフランチャイザーとフランチャイジーのどちらが負担するかについては,フランチャイズ契約の内容にもよりますが,初期研修であれば,契約締結時の「加盟金」の中に研修費用が含まれていたり,「研修費」としてフランチャイジーが別途支払わなければならない場合もあります。
また,開業後の研修については,フランチャイジーが毎月フランチャイザーに支払う「ロイヤルティ」の中に研修費用も含まれている場合や,別途研修費用をその都度支払う場合があります。

研修をめぐるトラブルについては,契約締結時に研修の実施について説明を受けたにもかかわらず,研修が実施されなかったり,実施された研修の内容が,極めて不十分であった場合に,トラブルとなるケースが多いです。
裁判例では,フランチャイザーが初期研修と称して,フランチャイジー側の従業員を使って無給のOJTを実施し,実質的には店舗営業を無給で行って労働力を搾取していた疑いが生じたケースなどがあります。

この手のトラブルは,最終的には「フランチャイザー側がどの程度の研修を実施すれば,契約違反になるのか」といった問題に帰着しますので,フランチャイザー側に法的責任を問えるかどうかは,ケースによってまちまちです。
トラブルを回避するためには,フランチャイズ契約の当事者間において,契約締結段階で,「具体的にどういった内容の研修を実施するのか」といった点をしっかり詰めておく必要があるとともに,フランチャイズ契約書に明記しておくか,研修内容について事前に合意した内容を別紙で作成しておく方法をお勧めします。

設計・建築と管理責任

フランチャイジーは,フランチャイズシステムにおいて,自ら店舗を建てることが出来ますが,フランチャイズの業種や事業方針に応じて,店舗の構造やレイアウトについて,フランチャイザー側から条件を定められる場合も多いです。
特にコンビニやファーストフード店においては,店舗の仕様が厳格に決まっているところ,その内装工事までをフランチャイザーが行う場合もあります。ただし,店舗での営業を行うのがフランチャイジーである以上,店舗の管理責任は,基本的にフランチャイジーにあります。

ですので,店舗の安全管理の面で不十分な点があり,顧客が店舗内で転倒して怪我をしたとして損害賠償を求めて来たなどという場合には,原則として店舗の管理責任者であるフランチャイジーが責任を負う主体となります。
ただし,場合によってはフランチャイザーにも責任が認められることがありますので,フランチャイザーとしては,フランチャイジーに対し,店舗の安全管理について十分な指導を行う必要があります。