(弁護士の関与後)
- スープカレー店の店長兼オーナーをしています。従業員から残業代の支払いを求められましたが、無視していたところ、退職して、弁護士から、過去2年分の残業代を支払えとの内容証明文書が届きました。
残業代を支払っていなかったのは事実なのですが、この従業員は問題行動が多く、店のバイクを壊してしまったり、お得意様の予約をブッキングさせてしまったり、会社に損害を与えてきた人物です。逆に損害賠償請求してやりたいのですが、どのように対応したら良いでしょうか? - 元従業員が会社に与えた損害に関する損害賠償請求をするためには、まずその証拠が必要です。客の勘違いではなく、本当に元従業員のミスでダブルブッキングしていたか否かについては、なかなか証拠の確保が難しい面もあるかもしれません。
バイクに関しては、不注意が明らかであれば一定額の賠償請求は可能かもしれませんが、業務に際して損害を与えた場合には、故意又は重大な過失でない限りは、その全額の損害賠償請求を認めず、一定額を会社も負担しなさいという解決例が裁判において定着しつつあります。
会社から元従業員に対する損害賠償請求というのは、一般的に、なかなかハードルが高い請求になりますので、慎重な判断が必要です。
弁護士が労働者サイドから未払残業等の依頼を受ける場合には、労働審判であればたった2~3回、期間にして2ヶ月程度で裁判所の判断を得ることができますし、訴訟提起をした場合には、半年から1年ほどを要することが多いですが、解決が長引けば長引くほど、退職後は年利14.6%の遅延損害金が付きますし、全く急ぐ動機が通常はないので、余裕をもって対応をしてきます。
使用者側から無理な要求をされてもこれに応じる動機が生まれにくく、裁判所の判断も定型的な内容が多く、弁護士が関与する事案としては比較的軽微な案件でさほどの手間もかからずに高額を手にすることができることから、一般的には、労働者側の大幅譲歩というものはその性質上得にくくなっております。
弁護士からの請求を無視してしまうと、根拠に乏しい請求をあえてしてきているケースでない限り、ほぼ間違いなく、労働審判や訴訟に以降してきます。個別事案によりけりなので、あまりに理不尽な要求をしてきた場合は別ですが、一般的には、労働審判や訴訟に進んで時間が経過すればするほど、遅延損害金等がふくれあがり、経営者サイドが支払いを余儀なくされる金額は高額化してしまいますので、交渉で少しでも減額が得られるよう、早めに弁護士に相談して早期解決を図ることをお勧めします。
弁護士に依頼をすると、料金が掛かってしまいますが、相手方も、弁護士に依頼をして料金が掛かっており、労働審判や訴訟となると、またその分弁護士費用がかかってしまうのが通常です。労働審判や訴訟に移行して増額する回収見込額と、更にかかってくる弁護士費用との費用対効果を考えて労働者側は交渉してくるのが通常のため、その当たりのさじ加減の判断は、やはり弁護士に依頼しないと難しいのではないかと思います。