アニサキスについて
最近、ニュースで取り上げられることが多くなりましたので、みなさんも耳にしたことがあると思います。
サバやいか、桜マスなどといった魚によく生息しているアニサキスですが、一定時間の過熱・冷凍で死滅するものの、生の刺身ではしばらく生息し続けるため、提供する側のお店も、お店で食べる客も、いずれも注意が必要です。
食中毒やアニサキスなどの食品事故に備え、各飲食店では、食品営業賠償共済等の保険に加入されているはずですので、万が一、アニサキスを口にして胃痛などを起こして病院で『アニサキス症』と判断されたとしても、その保険利用で、一定額の賠償がなされるのが通常です。
病院では、胃カメラで検査をして胃の中のアニサキスを撮影してくれ、アニサキス症との診断書を発行してくれます。
飲食店で取った食品の写真の中にアニサキスが写っていれば良いですが、そういった明確な証拠がない場合にも、飲食店を利用したレシートが残っており、その店以外ではアニサキスが寄生している可能性ある食品を口にしていないということであれば、アニサキス対策を徹底していることの立証に店側が成功しない限り(生物は提供していない、寄生の可能性ある食品の仕入れ事実がないなど)は、その飲食店で口にした食によるものであるとの事実上の推定が働く場合が多いでしょう。
アニサキス症との診断結果が出た場合には、病院の医師には、保健所に対する通報義務がありますので、お客さん自らが保健所に通報しなくても、保健所はその事実を知ることになり、保健所からお客さんに連絡が入って店の名前が浮上すれば、保健所が店の立ち入り検査を実施し、アニサキス予防に十分な措置を講じていないとして、数日間の営業停止処分に付されることになるのが通常の流れです。
お店にとっては大損害ですが、大切なのは、二度と同じことが起こらないよう、同様の被害を受けた可能性あるお客全員に誠実に事実確認を取って謝罪をし、再発防止策を講じるお客様ファーストの誠実さです。これをやらないと、口コミ評判が命の飲食店です。二度と立ち直ることができない致命傷を負うことになってしまいかねません。
さて、アニサキス症と診断された場合、どのような賠償がなされるのが通常でしょうか。
一般的には、①慰謝料、②仕事を休んだ時には休業損害、③治療費・交通費、の支払がなされるのが一般的です(+飲食代の返金ということもあり得るかもしれません)。
特に、お店と揉めたくないお客さんと飲食店さんとの間では、淡々と、保険の基準に則り、通院等に要した日数×5000円程度の慰謝料と、仕事に出られずに得られなかった給与相当額、治療費及び交通費の実額の支払いがなされて、示談という運びになることが多いです。
ただ、それでは納得がいかない等の理由で店側と揉めるようなことがあって弁護士が介入するようなことがあると、慰謝料額は20~30万円程度になることも少なくありません。
しかも、アニサキスについては、アニサキスが一度体の中に入ったことでアニサキスアレルギーを発症することがあり、じんましんが主な症状ですが、ひどい場合は呼吸不全、意識消失などのアナフィラキシー症状が出ることもあり、アニサキスアレルギー症状が出ているようなことが仮にあるとすれば、慰謝料額が一気に跳ね上がる可能性があります。
アニサキスは、調理方法を工夫したり、細心の注意を払って除去に努めれば、お客様への提供を防ぐことができるのが通常ですが、不運にも防ぐことができなかった時には、店側もお客の側も、いずれも深く傷付くことになりますので、難しい作業ではありますが、飲食店運営の現状を考えた時には、不運な面も否めない事象でもありますので、お互いを思いやりながらの解決が望まれます。
いずれにしても、このような事故を発生させてしまった飲食店さんは、起きてしまったことは、隠さず、正直に、迅速かつ誠実な対応に努めましょう。それがなされないことが、こじれる最たる理由になっています。
アニサキス事故を起こさないために
アニサキスの予防方法や起きてしまった場合のリスク、適切な対応方法などを未然に確認しておくことが事故を防ぐことにもつながります。飲食コンサルタントによる調理現場で行える実践的なアドバイスや、当法人の弁護士中村浩士が様々なトラブル発生時にお店を守るための最善のサポートを行わせて頂きますので、お気軽にご相談ください。