新型コロナ影響下における休業に伴う賃料減額請求は可能か
飲食業、観光業、小売業を中心に、新型コロナウィルスの影響による売上の大幅な減少にも関わらず、重くのしかかる賃料の減額を得られずに、休廃業か継続かに日々悩み、苦しんでいらっしゃる事業主様がたくさんいらっしゃいます。
結論から申し上げますと、賃貸人からの減額の配慮ももらえず、自主交渉しても減額に応じてもらえない場合にも、破産や再生手続を伴う退去の余地などを交渉材料に、弁護士交渉により減額を実現できる可能性はあります。
但し、個別の契約書の内容次第ではありますが、標準的な賃貸借契約書を用いている限り、法的に賃料減額を認めてもらうことは、なかなか容易ではありません。
1 民法第611条第1項
民法第611条第1項は、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益することができなくなった場合に、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、その使用及び収益することができなくなった部分に応じて、賃料が減額されると定めています。
しかし、単なる休業要請のみの場合には、営業所等の閉鎖が法的に義務付けられるわけではないため、民法第611条第1項の「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合」に該当すると解釈することは難しいと思われます(今後、都道府県知事から使用の制限又は停止等の要請(特措法第45条第2項)がなされたときには、上記のような解釈を取り得る余地も出てくる可能性はあります)。
2 借地借家法第32条
借地借家法第32条は、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、将来に向かって賃料の増減を請求することができると規定しています。
ただ、不動産価格や賃料水準が低下しているとまではまだ言い切れない現状においては、この規定に基づいて賃料減額請求を法的に認めるのは、未だ難しいように思われます。
これに対して、休業要請を受けるなどして、賃貸人が自主的に賃貸借建物の一時閉鎖を決定し、賃借人が使用収益できない状態にした場合には、民法第611条第1項による賃料減額や、賃貸人の賃貸借契約違反、債務不履行という問題が生じ得る場面でもあり、賃料の減額は認められる可能性が高いと考えられます。