男性は、お酒が先にありきな傾向が強く、女性はその逆で、料理が先にありきで、お酒は合わせるものという傾向が強いと言われます。

日本酒は、基本、相性の悪いものが少ないので、あまりこのマリアージュ(結婚、相性)を気にしなくても何とかなりますが、ワインの場合には、この点に無知であることは致命傷となり、ワイン好きは近寄らない店になってしまいます。

例えば、かずのこや鮑等の海産物について、安易に白ワインなら合いそうだというレベルで提供してしまうと、生臭さを助長してしまい、ワイン好きの客であれば、クレームが付く可能性があります。

どの料理と組み合わさるかで、ワインも日本酒も、その味わいが全く変わってしまいます。味の薄い赤ワインだなと思っていたものが、すき焼きを食べた後に口にすると、非常に濃厚で芳醇であり、大変に美味しく感じられる等のことがたくさんあるのです。

ワインも日本酒も、この料理とのマリアージュについて、上記のような勉強をすると最低限の知識が得られます。

「そんな細かいことは気にする必要ない」「分かる人なんて早々いないだろう」と、自分勝手に勘違いをしてしまってはいけません(飲食に携わっている人であっても、そういういう人が少なくありません)。

飲食に大切なのは、様々な客層のお客様の味覚を満足させることであり、自分の偏った好みを充足させることではありません。この点において視野の狭い自己中心的な人は、飲食には向いていないものと言わざるを得ません。弁護士という業務も基本的には同じなのですが、自分の価値観の押し付けは、絶対にやってはいけないことなのです。

ワインに精通した方は、ワインの香りを数メートル離れたところからでも嗅ぎ分け、飲むまでもなく味の傾向を把握してしまいます。酒食の経験値というのは、本当に人によって千差万別であり、知らないこと、経験していないことに謙虚になるべきは、飲食業においても全く同じだと思います。

これらのことに気付かず、我流で意固地にたかだか自分が経験してきただけの飲食像至上主義で飲食店の経営を続け、客が入らない原因にいつまでも気付かず、人のせい、景気のせい、にし続けている飲食店があまりにも多いことには、本当に驚きます。繁盛している競合店に足を運んだり、きちんと酒食してきている人の声に耳を傾けるだけで、原因にすぐに気付けるはずなのですが。