飲食店における無断キャンセル(ドタキャン・ノーショー)等の予防と事後対応

後を絶たない、ドタキャン・ノーショー対策として、全日本飲食店協会が、電話番号でドタキャン歴を照合するシステムの無料提供を開始しました。

https://news.mynavi.jp/article/20180214-584436/

予約時の電話番号と過去のドタキャン歴を照合し、事前の予防策に役立てることができるサービスで、個人の特定を目的としたものではありませんが、店舗側はドタキャン回数の多い相手に対して、「予約を断る」、「前金制で案内する」といった対策を立てられることになります。海外などでは、事前にクレジットカード情報を店に渡して無断キャンセルをリスクなしに行うことはできない店が多数存在しています。

さて、このようなシステムを利用して事前の予防が出来れば良いのですが、そうでない場合の、他の代替策や、あるいは不幸にも発生してしまった場合の対応策について考えてみたいと思います。

一番現実的なのは、ナンバーディスプレイを導入してきちんと着信履歴を残しつつ、電話で予約を受け付け、「●日前のキャンセルの場合にはキャンセル料が●●発生します」と伝えて牽制したり、前日み店側から予約確認を入れて確認が取れない場合にはキャンセル扱いとすることを伝えておくなどと言った対応が取れれば、かなりの確率で予防ができると思いますし、実際に、そのような対応を採っている飲食店も少なくありません。

ただ、有名繁盛店であれば、私も実際に、「前日にもう一度電話をくださいね。電話をくれなければキャンセルになりますから。」と言われたことがありますが、このような措置をとることは可能だとしても、正直、客にとってみれば横柄に感じられることにもなりかねないこのような対応を、一般の飲食店で取ることは、現実的には難しいと思われます。

電話では、角が立ちますので、HPなどでネット予約受付をしている場合には、上記のようなことを書いておくと、実際に違反があったときにその通りにキャンセル料を請求するかどうかは別として、法的には、効力を発揮する場合があり、書いておくことも一方策ではないかと思います。

ただ、やはり、よほどのことが無い限りは、まだまだ、大切なお客様相手にキャンセル料を請求する、というところまで踏み込めない飲食店さんがほとんどであろうと思います。

その場合には、はっきりとこのようなことを明示せずとも、ネット予約であれば、メールアドレス、電話番号、住所等、集客の妨げにならない範囲でなるべく多くの顧客情報を得ておくことは、心理的に無断キャンセルをしにくくなりますので、有効です。

実際には、電話番号かメールアドレスが分かれば、弁護士会照会という制度により、弁護士が調査できる場合が出てきます。

あとは、あまりにもひどい無断キャンセルや、大人数で損失が大きすぎる無断キャンセルの場合には、一定額のキャンセル料金を事後的に請求し、誠意ある対応がない場合には、弁護士依頼を検討しつつ、そのことも相手方に伝えて交渉してみると、初めてやっと話し合いに応じるという場合もあり得ます。

近時は、無断キャンセル客を相手に訴訟を起こす事例も出てきており、認めてもらえる金額はケースバイケースですが、そこまでした場合には、一定額の賠償が得られる可能性は高く、あとは、弁護士費用との兼ね合いということになりますので、実際に訴訟までできるケースというのは、費用対効果からは限られた事例となり、せいぜい、内容証明郵便などで弁護士から賠償請求をして、一定額の賠償を実現してもらうというところが精一杯であることが多いかと思います。

ただ、いずれにしても、このような対応を含め、「え?この店ではそこまでやるの?」という声を起こさせるわけにはいかないというのがやはり店側の弱い立場であり、上記のような方策により予防に努めたり、やはり飲食店においても、無断キャンセルを含む様々なリスクに備え、用心棒たる顧問弁護士の選任を考えるべき時代になっていると思われます。