従業員との雇用契約に際して の留意点

実際に飲食店を創業・運営しているオーナー兼弁護士の立場から、飲食店の創 業・運営において留意すべきポイントについて連載していきます。

今回は、「飲食店における人事」の第一弾として、従業員との雇用契約に際して の留意点をお話します。

従業員の雇用に当たっては、正社員、契約社員、パート従業員、アルバイトのい ずれであっても、必ず、雇用契約書を交わしてください。

きちんと雇用契約書を交わしておかないと、無用な残業代請求や、退職や休業に 際してのトラブルを抱え込むことになってしまいます。

さて、ここで特に気を付けなければならないのが、飲食業界の特殊性です。

良い人材が確保できれば良いですが、残念ながら、採用はしたけれども、すぐに 出てこなくなる、接客が雑、提供物の分量が適当であるなどといっ た勤務態度 が不良で辞めてもらいたくなる、店の食材や金品を横領する・・・実に様々なト ラブルが発生しているのが、飲食業界の現場の実態で す。

これらのリスクに備えた、飲食業界にフィットさせた契約書(就業規則も同様 で、一般企業の物の使い回しは避け、店舗オリジナルのものを作成す ることを お勧めします。当事務所でも作成しています。)を是非作成しておきましょう。

例えば、仕入れや仕込み時間、清掃を含む後片付け時間も全て、賃金を支払わな ければならない労働時間に該当しますので、きちんと労働時間を契 約書に明記 して、始まりと終わりを明確にしておくことが大切です。その上で、その前後で 無用にダラダラと残って、後に「残業代を支払ってく れ」と請求されたとして も、「残業はしていない」ときちんと反論できるように、無駄に店舗に残ってい ることがないよう、日々指導しておく必要 があります。また、「仕込みにすご く時間が掛かっていた。オーナーのあなたには分からない作業をたくさんしてい たのだ」などという弁明を許さ ないためにも、業務マニュアルをきちんと作成 して、日々の事前準備、仕入れ、後片付け等にどのくらいの時間を要するのか、 また、仕込みが必要 なメニューとそうでないパッケージ物等の区分をわかりや すく整理しておき、「普通はこのくらいの所要時間で足りるはずだ」ということ を証明で きる仕組みと資料を整えておく必要があります。水掛け論になってし まったら、従業員から請求されるままの残業代の支払いを余儀なくされる可能 性があります。

「そんな仕事は契約外だ!」などと言われないように、仕入れ、仕込み、清掃、 グラス拭き、HPやブログ更新、メニュー開発や調理、現金管理を 含む会計処理 等の、飲食における多種多様の業務のうちどこまでを業務内容として担当しても らうのか、きちんと契約書に明記しておくことも大切 です。

本来は、オーナー自らが、これらの現場感覚を持っていれば、嘘がまかり通るこ ともないことが多いのですが、なかなかその時間が取れない場合に は、飲食の 現場感覚を持っている弁護士がこれらを把握しておくことも可能です。

また、契約期間を明記しない正社員扱いでいったん従業員を採用してしまうと、 後に問題があることが発覚した場合に容易に辞めてもらうことがで きなくな り、無理に辞めさせた場合には、「不当解雇」だとして、解雇無効による慰謝料 や未払い賃金の請求をされるリスクを抱え込むことになっ てしまいます。その ため、試用期間を6ヶ月程度契約書に明記したり、最初はアルバイトないし契約 社員として期限を区切って採用し、実際の働き ぶりを見てから正社員雇用に切 り替える方が無難であり、この場合には、正社員転換の助成金を得ることもでき ますので、飲食店経営においては、 必須の対応であると考えています。

このように、飲食店での人の雇用に際しては、一般企業とは異なる、飲食運営独 自の視点から、その特有のリスクを回避する工夫を施しておく必要 があります ので、十分にご注意ください。昨今、運送業界での労務リスクが各地で顕在化し て多くの経営者が悲鳴を挙げましたが、飲食業界にもそ の波が押し寄せてお り、労働紛争が激増していますので、法的な予防を是非今から実践されることを お勧めします。

飲食店の労務管理のことなら何でもご相談ください。

残業代問題への対応、解雇問題への対応、就業規則の整備、その他 労務管理コンサルなど、実際に飲食店を自ら経営している弁護士が現場目線で支援いたします。
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